METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

柴田直人自伝/柴田直人

 ヘヴィーメタルバンド「アンセム」のベーシストの自伝。このバンドを初めて見たのは87年だと思う。若い頃1ヶ月間に神戸、広島、徳島と追っかけたこともあるぐらい好きなバンドだ。この本は昨年出ていたのだが思い出したように入手して一気読みした。アンセムの断固たるリーダーで音楽のためなら鉄拳制裁もあり!みたいな人だと思っていたが、意外やデビューするまでは音楽やバンド一直線でない普通の人。他人が作ったバンドでいつの間にかリーダーになってしまって気づいたらデビューしていたという事実には少々驚いた。デビュー後はリアルタイムで知っているが、伊藤政則氏や有島博司氏が、ここまで深く関わっていたとは思わなかった。音楽業界ってバンドを支える人達の存在って欠かせないな。バンドは意欲的なアルバム製作と精力的なライブ活動を続けるがバンドの成り立ちから来るメンバー間の考え方の違いによりバンドは徐々に活力を失っていき柴田も消耗していく。この辺りは読み物としても特に面白い、というと苦悩された本人には悪いのだが、心理描写が実に巧み。時に笑いも交えつつ赤裸々な本音が伝わってくる。なぜ本音とわかるかと言えば発表されたアルバムの音が正にその通りだからだ。「ノースモークウイズアウトファイヤ」というアルバムがあるが、最初に聞いた時からもの凄い怒りとか焦燥感など他のアルバム(これ以降も含めて)とは明らかに違う物を感じた。やはりバンドの状態、メンバー個々の心理が如実に反映されていたのだ。
 バンドは92年にとうとう解散してしまう。解散コンサートは柴田本人はやりたくなかったらしいが契約の関係上やらざるを得なくなり一回だけ行われライブアルバムとして発売された。行けなかった俺はそれを聞いたが最後の曲が終わるとアンセムコールが鳴り響きそれが突如終わる。あの終わりを聴いた時は一人部屋で涙した。
 そこからは雑誌にもほとんど出ていなかったので初めて知ることばかりだ。他のバンドからの誘いがあった事、バンドを当分やる気にならなかった事、作曲家の道を模索していたこと。そんな彼をバンドに引き戻したのは元アンセムの関係者だった。メタルの世界では超有名名門バンドであるラウドネスに加入する事になるが、これには俺を始めメタラー諸君は相当な違和感を感じたはずだ。4枚もアルバムを作ってのには改めてびっくりした。ラウドネスファンからはインド期(笑)と呼ばれている思い切りへこんでいた時期だ。俺は聴いたことが無い。しかしこれが精神的リハビリ期間だったことは間違いなくその後のアンセム復活へと繋がっていく。自伝はアンセムが復活した2001年で終わる。今現在もアンセム柴田直人の活躍は80年代にもまして盛んに続いているからこここで終わっているのだ。