とにかくこの本は一人でも多くの人に読んで頂きたい一冊。
---あとがきから引用---
「特攻」を現代の高みから見下ろすだけでなく、当時の視点で正しく認識することこそが、将来、ふたたび戦争を起こさないための力になるのではないだろうか。
---引用以上 ---
特攻は大西瀧治郎海軍中将が発案し命令を下したと言われている。確かに主要人物の一人に間違いないのだが、その真意はただ闇雲に敵艦撃沈のみを目指した物ではなかった・・・関係者への丹念な取材によってまとめ上げられた著者渾身の一作。取材は平成初期から中盤にかけて行われているが、昭和の時代であれば語れない雰囲気があったし、その証言がまともに世に出たか怪しい。平成中盤、戦後50年ぐらい経ち関係者の気持ちも時と共に変わっていったのであろう。もちろん著者のこの問題に対する真筆さが真実の証言を引き出したのは言うまでも無い。関係者の大半が鬼籍に入られた今ではこの様な本は出来ない。時期的に絶妙だったと思うし、そこには奇跡的な出会いもあった。主な証言者は大西中将が特攻を発案実行した時点で最も身近にいた門司主計大尉と特攻隊の護衛機として終戦まで飛び続けた角田少尉の二人。戦場では直接的に縁が無かったような二人だが戦後、著者が二人を結びつけると意外な接点が浮かび上がる。この二人と著者が出会ったことは奇跡の邂逅と言えるだろう。
大西中将の真意とはフィリピンでの戦闘までで戦争を終結させることだった。特攻攻撃という通常では考えられない攻撃方法により昭和天皇にもう日本はこんなところまで追い詰められたという事をわかって頂き、終戦の詔勅を出して頂く事だった。誰が言うのでも無く昭和天皇が終わりなさいと言うことが最も重要だった。結果的に天皇の詔勅という目的は達せられるがせめてあと半年早ければ多くの人が死なずに済んだのにと思うがそれは現代の高みから見た言い方だろうか。
それにしても特攻に関する責任を全て背負って自決なされた大西中将の覚悟の何と凄まじいことであろうか。
今日の日本の繁栄は大西中将や特攻で無くなられた方々のおかげであると確信する。