生誕80周年記念のリマスター・リミックスベストアルバム。あなたはどちら派と聞かれれば迷わずポール派な俺だが、ジョンのソロ作品は昔、友達から借りたアナログ盤をカセットテープに録音してとりあえず一通り聞いている。なので俺が聴き馴染んでいるのは2000年代のリマスター盤を買った「ジョンの魂」「イマジン」の曲ぐらい。そんな俺の耳にこのアルバムは如何に聞こえたか。
ビートルズのリマスター/リミックスもそうだが、最近の音は昔に比べるとかなりアナログ再生音に近づけるようにしていると思う。以前のリマスターは解像度を高くすることに重きが置かれノイズは無くなり各楽器のパワーは強くなり、ヴォーカルの息づかいもよく聞こえた。しかし、音がどこか硬く感じられていた。俺が持っている「ジョンの魂」はまさにジョン・レノンが本性むき出しになっている様な作品だが、ジョンの私生活の愚痴を耳元で聴かされているような生々しさがあり聴くのが辛いほどだった。ジョンのソロ作は「サムタイムインニューヨークシティ」までは内容に塩味が効きすぎてキツい曲がかなりある。そのキツい曲がならぶ1枚目だが、和らいだ音になっていて大変聴きやすい!これは意外なる効果と言えるかもしれない。でも”孤独”とか”ゴッド”が詩の朗読みたいにすらすら聴けて果たして良いのだろうか(笑)。
そんな1枚目に対して2枚目はジョンも大人になったねって曲が中心。安心して聴けると思いきや、今回一番音が変わったのが「ダブルファンタジー」からの曲とは驚いた。ニューヨーク録音のこのアルバムは非常に洗練された少し冷たい感じのする音だった。それが温かみさえ感じさせるふっくらとした音に変わった。”ウーマン”なんぞ70年代のポールの曲かと言うぐらい甘い聴き心地。一番クールな印象の曲である”アイムルージングユー”でさえ温かみが出た。温かみを出すためか各楽器の定位はややぼやけた印象だが解像度は落ちていない。ここが最新技術の凄いところだ。
アルバム全体を通してジョンのヴォーカルを聴かせることを前提にしたリミックスが行われているが、あえて言うとジョンの声は美声とは言い難くポールのように七変化の魅力も無い。コーラスが無い曲がほとんどなので時に音程厳しいかなとか声つらそうとかが、わかる所もチラホラ。ラブソングとなるとジョンの声の頼りなさが心に染みる事になるのだが、やっぱりジョンにはポールが必要だったんだよと今更ながら思うなー。
曲順に関しては頭3曲がよろしくない。基本、時系列に並べられた曲順だが超地味な”インスタントカーマ”は1曲目として相応しいか?。早くも2曲目に塩味にドラッグ風味の”コールドターキー”は辛いのに、続いて今度はダウナー系弾き語り”労働者階級の英雄”が来るのだからマニアは良くても一般のお客さんはドン引きでしょう。1曲目はアルバムタイトルの”ギミサムトルゥース”から始めて”平和を我々に”を2曲目に持ってきて最後の最後は”ハッピークリスマス”で締める方が良かったんじゃないかなー。それと写真の解説が日本盤としては欲しかったな。