戦国時代にどちらかと言えば敗者とされる6人を巡る短編集。表題の作品はダメ大名の典型のように言われる今川氏真。お公家趣味の蹴鞠イメージは強かったが、天才的にお上手だったらしい。周りから見れば落ちぶれていく様、秀吉のお伽衆として生きていく様は惨めに見えるのだが、本人は全く気にしていない。ただね、本人は良いだろうけど周り、特に今川家の人々は大いに迷惑を被った方も多かったわけで一概にこういう生き方が良いとは言えないよなー。確かに本人が戦国大名に向いてないのは十分解るが。
「戦は算術に候」は長束正家という激シブアイテム。読んでいて融通が利かない点で大村益次郎を思い出した。とにかくこの人は算術の天才。
が、人の心はさっぱり読めない。関ヶ原の落ちが秀逸。
「短慮なり名左衛門」は”愛”と誠のはずの直江兼続が真っ黒な陰謀でだまし討ちする話。これが一番面白かった。
どの物語も一癖も二癖もある。短編ではあるが見事に主人公の生き様を描いていて、キャラクターが濃い。(2020年11月29日読了)