作者の初期作品集。
表題作「草にすわる」が書かれたのは2003年。極初期の作品だが作者の魅力がことごとく備わっている見事な佳作。すなわち運命の人に出会ってちょいとエロい展開になってドロドロなんだが最後はなぜかさわやかさが伴うハッピーエンド。次の「花束」も作者の得意ジャンルとも言うべきビジネス物に近く、雑誌業界を舞台としている。脇役がちょいとクセがあり最初馴染めないが、これも最後は大ハッピーエンド。「大切な人へ」も同じく魅力的な佳作。こちらはちょいと頭の良いぼっちゃまと生い立ちが不幸なヤンキー娘の恋物語。「7月の真っ青な空に」も似たような傾向の作品だがあまり出来は良くないように思う。「砂の城」だけは異質な作品で、ある作家の鬱々とした感情がうねうねと綴られている感じで作者自身が精神を病んだ経験があるのでそういう暗い心理描写が切実に迫る。(1月20日読了)