ソロ作の「グレースフォードローニング」からファンになった。70年代プログレの重く暗い部分を現代風にアレンジした作風が好きだったので直近の2作は若干の物足りなさを感じていた。しかし今作は70年代後半のディスコブームに影響された楽曲の心地よさの方が上回っている。彼とは世代が近いのでよく解るが、70年代ディスコブームのきっかけとなったのは言うまでもなくサタデーナイトフィーバーである。あの映画実は結構暗い。毎日を鬱々と暮らす若者が土曜の夜だけはディスコでヒーローになるのだが、そこでうまくいっても現実に戻れば厳しいと言うような内容だ。本作も聞いた感じのきらびやかさに潜む根暗さは確たるものがある。俺もそうだがディスコブームの曲は好きだがスティーブンは絶対ディスコに行けない、ましてディスコでナンパなぞできないオタクだったに違いない。聴き易さの奥に潜む暗さを見つけて楽しむ魔太郎くん的アルバムだ。