ロブがゲイであることはメタルファンなら周知の事実。とは言えここまで赤裸々にその行為を書かれると正直ドン引きである。その苦悩には同情しつつも、あまりにもえげつない行為が連続し中盤辺りからその辺の話は少々飛ばし読み気味になった事を正直に書いておく。
少年期からバンド初期はほとんど語られてこなかったような事ばかりなので新鮮だ。デビューアルバム以降の成功譚は日本のメタルゴッド伊藤政則氏がよく伝えてくれているが、グレンとKKがバンド初期からあまり仲が良くなかったとは驚きである。80年代のプリーストマニアは二人の固い絆を信じていたしインタビューや写真などからも鉄壁のツインギターは感じられても仲が悪いとは露とも思わなかった。その後KKが脱退した時も何かきっかけがあったんだろうな程度に考えていたのでかなり衝撃を受けた。また歌詞には芸術的ではなくゲイ術的なものがあるのは少しは知っていたとは言え(ジョーブレーカーは有名なので)これも、かなりイヤー気がした。
そして1992年ロブ・ハルフォード ジューダスプリースト脱退。
プリーストファンの大部分は何があってもそれだけは絶対ありえないと思っていただけに、あれは人生最大級の衝撃だった。それは小さな誤解から始まった伝えられていたが、俺も人生50年以上生きてきて、こういう小さなボタンの掛け違いが大きな流れに成ることは、たまにあるので非常に身にしみた。そんな目的意識も何もないソロ活動が上手くいくはずもなく暗礁に乗り上げついに2WOで(アルバムは買ったんですよ。今聞いても辛い)どん底に至る。ここまではプリーストが栄華を極めつつもロブ自身は混迷を深めながら堕ちていく展開だ。ガラリと一変するのはカミングアウトしてから。このカミングアウトも偶然だったそうだが、この時期にはロブがゲイであることは”あっ察し”の状態で世間のゲイを見る目も随分変化してきたいたので(エイズの終息とフレディの死など)タイミング自体が天恵であった。現時点、このカミングアウトがプリーストでデビューしてから丁度ほぼ真ん中にあたる。念願かなってプリースト再加入以降も山あり谷ありではあるがロブは非常にいい感じで生きているのが伝わってくる。
この回想録が単なるゴシップ本に終わらないのはカミングアウト後の清々しい開放感に非常に人間味を感じるからだと思う。俺もそうだが世間はまだまだゲイ対して嫌悪感がある。だがそういう人や嗜好に対する理解はあってしかるべき。なぜならばそういう世間からの嫌悪感は80年代初期にメタルファンが感じていた世間からの目線そのものだからだ。隠さなかればならない苦悩、仲間を見つけたときの安堵感、一般的に認められた時の開放感はメタラーならばもちろん理解できると信じたい。