METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

ハロウィン/ハロウィン

 東西ドイツ統一並みの大団結が生み出した2020年代最初の大傑作。

いわゆる他のバンドにおける全盛期メンバーが復活しての再結成アルバムとは事情が異なるのは皆さんおわかりだろう。またハロウィンはバンドのヴォーカルが変わって商業的にも音楽的にも成功できたバンドである。ヴォーカル交代による失速は枚挙にいとまがないが成功したバンドは稀有である。
確かに最近は音楽的にも商業的にも煮詰まっていたかもしれない。
でも歴史が長いバンドはみんな同じだ。
普通なら商業的にもっと成功したメンバーに交代してアルバム作ってとなるし、カイやキスクが復帰、脱退を繰り返す再結成ロンダリングビジネスだって出来るが、そうならなかった。
カイもキスクも喧嘩別れに近い脱退をしたが、脱退後は成功を収めたジャーマンらしい頑固な人たちだ。ヴァイキーは正にバンドの守護神としての誇りがあり、加えてアンディにも稀有な成功をもたらした実績がある。
船頭多くして船山に登るという故事を出すまでもなく、まあ間違いなく失敗を約束されたようなアルバムだと思ったが、船が山に登ることもあるのだと思い知らされた。そういえばドイツは河が大きいので内陸部まで船が行くため陸地に造船所があったりするんだったわ(笑)。

 皆がこの新譜に期待したのはやはり守護神伝のあの”タメ”があってその後にあの疾走感がくる高揚感バリバリの展開であろう。
だがこのアルバムにはそこまでのタメは無い。ここがまず2020年代だと思った。さらに全曲ほぼ疾走するスピード感。車に例えれば、昔のバンドスタイルが自分でハンドリングしながらコーナーを抜けアクセルを力いっぱい踏んで加速していく快感がならば、本作はまるで高速道路を自動運転しているような気持ちよさがあり、一枚聴き終わって高揚感がじわじわと来る。これも2020年代のスタイル。そこには懐古趣味のサウンドは殆ど無い。
何が自分たちらしいのかとか、各メンバーの良い部分を合わせたとかそういうのでは決してこのサウンドは出来ないだろう。全員が新しいハロウィンサウンドを作ろうという方向で意見が一致して制作された結果がこれだ。あともう一つマイケル・キスクのヴォーカルに衰えがなかったこともこの奇跡を生んだ大きな要因だと思う。
アルバム帯に書いてある「ハロウィンを忘れよハロウィンが現れる」は絶妙である。