大河ドラマ「青天を衝け」主人公の渋沢栄一を描いた小説と言えば城山三郎「雄気堂々」が有名だが、こちらは戦前の大作家、大佛次郎が若き日の渋沢に焦点を当てて描いた作品。大佛本人が学生時代の大正初期には渋沢は存命で、いわゆる名士として知られていた。企業経営の第一線から退いた後も相談に来る人は後を絶たなかったそうだが、大佛を初めとする学生達が愛人でもいるのではと冷やかしに来ても、全く偉ぶること無く気さくに彼らにも会っていた。そんな導入部から一気に渋沢の故郷血洗村に舞台は移る。この辺りは大河ドラマそのままで頭の中にあの人達の顔と声が浮かびながら読み進められます。平岡円四郎だけはあのキャラクターと違って落ち着いてますが(笑)。
まあ、当然と言えば当然なんですが、ストーリーは、とにかく大河ドラマそのまんまです。昭和の小説独特の言い回しや心に染みる言葉もあまりなく大河が無ければあまり印象に残る作品でも無いかもしれません。