本物の戦場カメラマン 宮嶋茂樹氏の戦場レポートシリーズは昔から愛読している。戦場できれいなねーちゃんを撮るというふざけた企画もあったが、我々が思い浮かべる弾が激しく飛び交う最前線から一歩引いたところも戦場であり、その戦場でも美しさを忘れない女性を写すことで現代の戦場の実相が伝えていた。そんな宮島氏も還暦を過ぎてシリーズもさすがに長らくご無沙汰だった。そんな氏を叩き起こすウクライナへのロシア侵攻。どうも侵攻前からかなりやばいということは、つかんでいたようで動きだしたのはむちゃくちゃ早く、出遅れたと書いているが最初の出発予定は侵攻翌日2月25日!結果的にコロナのご時世もあって3月2日。ポーランドに到着して首都キーウを目指すが、ここから検問、また検問につぐ検問。ようやくキーウに着くのだが、ほとんどノープランで来た上に昔と違って体力がない。そのため昔の著書と違って爽快さはないのだが、どうにかなるさという安定感がないので緊張感が半端ない。
しかし、戦場の様子なんぞSNSでほぼリアルタイムでわかるこのご時世、本なんて意味あるんかいな、と思うだろうが、この本から一番伝わってくるのはウクライナ国民の戦闘意欲の高さ。ウクライナ”軍”ではないのだウクライナ国民全体が国を守るという士気が高い。これは既存のメディアやSNSからあまり伝わってこない。この戦争はすでにロシア対NATOになりつつありNATO支援による兵器や物量に視点が集まりがちだが、国を守るウクライナ国民があってこそ成り立つ。では何をしてここまで国を守るという高い士気につながるのか。不当な侵略以上の歴史的な経緯もある。最終章ではドローンについて書かれているが、つい先日まで一般人だった兵士が最前線で最新兵器を使い、しかもそれが戦況を左右する。これが戦場のリアルだ。最後の戦場と言っていたが結果的にまた行くことになるらしいが、それは中止になって欲しいよね。