奥田英朗は文庫化の度に買っていると思っていたが何故か買い逃していたようだ。
書店でたまたま見つけて即購入したのが金曜日。
読むスピードは遅いこの俺がたったの二日程で読んでしまった。
物語前半の「ナオミの章」は主人公直美がDVに遭っている親友加奈子の相談に乗るのだが、いっそ旦那を殺してしまうか!という事になりその計画を練るという過程が描かれる作者らしくないとも言えるスローな展開。
直美は今の仕事にやりがいを感じてはいるものの、心の片隅には別にやりたいことがあるという、ありがちな20代後半の女性として描かれている。
その直美が人殺しという突拍子も無い事をあえて冷静に考えて実行していくのだが、これが暗すぎず楽しすぎず描かれていく。
後半「カナコの章」は作者得意の逃走劇となる。
実行直後は完璧なように思われ計画だったが、義妹陽子の執拗な捜索もあり、次々と証拠が挙げられていく。
そしてあろうことか計画最大のポイントであった替え玉の中国人が日本に帰ってきていた!
ナオミの章で中国人李朱美の行動からいかに中国人が日本人と違うメンタリティで、人を裏切り、だまし、言い逃れるのが平気かが描かれるが、その伏線がここで活かされる。
しかし逃走を助けるのも一旦身内になるととことん親身になる李朱美だったのは皮肉といえば皮肉。
最終盤の逃げれるのか、いや駄目か、大丈夫か、いやまだ追ってくるというハラハラの展開は実にスリリングだった。
そして最終的なオチが描かれていないラストは殺人事件を題材とするコメディで終わらせるためにはこれで良かったのだろうが、ちょっと物足りなさは残る。