前作に続く2枚組。ステイホームだからじっくり聞けよという”戦術”だ。1枚あたりは45分ぐらいでLP2枚組と変わらないので長くは感じなかった。スティーブがLPを意識したのであれば1曲目は速い曲とかB面最後にバラードとか、メリハリをつけても良かったのではないか。ウイッシュボーンアッシュや初期ジェネシスを多分に意識していてそういう世界観で曲を作っていることはよくわかる。前作はタイトルからしてそういう曲がそろっても良いが、今作はタイトルは戦いだし、初期からのファンならばEP「ヘヴィメタルアーミー」を思い出すアルバムジャケット。1曲ぐらいは吐き捨て疾走とまではいかずとも速い曲が欲しかったな。
そういう希望を捨ててアルバムの世界観にひたすら没入すれば、これは非常に味わい深い良いアルバムだと思う。レイヤーを何枚も丹念に重ねていくようなメロディアスなギター。語りかけるようなヴォーカル。時に温かみが感じられるベース音。デビューから10年ぐらいは椅子を蹴飛ばして立ち上がるよう曲を作ってきたバンドが、40年経って椅子に座ってじっくり聴き込むアルバムを作るようになったのである。これは衰えとか変節とは異なる。いい意味で熟成だ。もしかすると、今作が物足りない若いファンも、いつかはこれが味わえるようになるよという深遠なスティーブの”戦略”なのかもしれない。