METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

にほんのうた/みの(KADOKAWA)

 YouTube動画でよく知られている音楽評論家・ミュージシャンの”みの”氏による日本音楽史。二昔前に邦楽と言えば(今でもNHKはそういう意味合いで使っている)いわゆる尺八やら三味線などの伝統的日本の音楽を指していた。洋楽の対極にあるものという意味から邦楽と呼び分けていた。なぜなら明治維新以降の日本の音楽は洋楽を基礎として成立したからである。この辺は

基本知識として少し音楽の教科書にも書かれていた。それを令和の現代に至るまで体系的にまとめて明確に文章化した本は今までになかった。巻末の大量の参考文献の様な学術書もたくさん出ているが、江戸期からの邦楽がどのように現代に受け継がれてきたかとか、洋楽コピーから始まった日本の音楽が如何にJ-POPになったかみたいな部分部分を扱った本はあった。それが日本の音楽として全てつながっているというのは学説として初めてではないか。

 江戸後期に入ってきた洋楽はまず軍隊を動かす”音”として入ってきた。それを広めるために明治期に西洋音楽教育が始まったわけだ。それが大正時代になると邦楽とうまく融合、まさに政府奨励の和洋折衷で独特の音楽を作り上げていく。それが第二次大戦後、占領軍によって洋楽のエッセンスが入ってくることによって洗練されていく。もちろん洋楽の劣化コピーから始まったしそれが大部分を占めていたのも事実。だが他の工業製品と同じように技術的に洋楽を凌駕するバンドも出てくるようになる。そして日本語という言葉の壁を乗り越えて80年代後半にJ-POPが成立し、さらに90年代から現代においては初音ミクなどの日本オリジナルとも言える音楽を生み出している・・・というのが大きな流れだ。

大変な労力が費やされた素晴らしい歴史書だと思う。

ただ戦前から戦後までは非常に興味深く面白く、GSから80年代あたりまでは俺自身が経験していることもあって面白いのだが、それ以降が急にトーンダウンしている様に感じられる。あまりにジャンルが細分化しているのと2000年代以降確かに初音ミクは一般的にも知られているが、それ以外のジャンルはどうも一般的になっているとは言い難く音楽そのものがムーブメントとして小さくなっていることが感じられる。もう一度、古くからの日本の音楽を掘り起こして新しい日本の音楽を作り出すためには良い教科書だと思う。温故知新だ。

本書で取り上げられている楽曲の音源が聴ける著者のNOTE)

https://note.com/lucaspoulshock/n/nbfe020a8dc66