METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

日本沈没/小松左京(角川文庫)

復活の日」を読んだ勢いで読んでみた日本SF文学史上に輝く名作。「復活の日」も十分に恐ろしかったが、それ以上に恐ろしくしかも悲しい。しかし作品のまとまりとしては「復活の日」の方が上のようにも思える。まず地震理論の説明がやたら長いので、正直なところかなり飛ばし読みした。時代は60年代で電話とかタバコとかの描写に時代を感じさせる部分はあるが文章自体から古さを感じさせない。しかし中途半端で唐突なエピソードがあり、必然性があまり感じられないキャラ設定など整理されていない印象を受ける部分もある。だがそれらはついに書かれなかった続編で活かされる設定だったのかもしれない。

現代を生きる多くの日本人は阪神大震災以降に起こった大地震を体験または体験がなくても映像が目に焼き付いている。ゆえにこの小説での地震被害のリアルな描写は心底怖いが、この作品の真の怖さは別の所から来ている。
「何か起こったら日本というゆりかごの中に戻れば良い。それがなくなってしまうこの民族が・・・」という部分は悲しくも真実を鋭く突いている。日本人にとって日本を失うということが如何に恐ろしいことか。
この現代、日本は人口減少、産業流出と沈没に近い様な状況ではないか。
そうなってしまったときに日本人は日本という島に閉じ籠もり始めた。
かつては素晴らしい実力によって世界を席巻した日本、日本人の様に言われていたが、実は日本という国の人口が増えた人口ボーナスに上手く乗った結果だと、現在は言われている。偉そうにしていた電気メーカーが日本市場が縮小し始めた途端に世界市場でコテンパンにやられたのを見てよくわかった。所詮日本人は日本という島があってこそ日本人なのだ。それが自分達自身でわかっているからこそ、この小説の結末に恐怖する。人類が、は虫類に生物的な嫌悪を抱くかのような根源的な恐怖なのだ。

なぜ小松左京は第二部を書かなかったのか。
生き残って悲惨な目に遭う日本人を描くのは心苦しかったかららしい。(小説中では約7000万人が日本からの脱出に成功する)