METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

悪魔が来りて笛を吹く/横溝正史(角川文庫)

悪魔の手毬唄」を最高傑作と書いてしまったが、こちらの悪魔も甲乙つけがたい傑作。”手毬唄”を陽とするなら”笛”は陰。まず登場人物に魅力がないどころか全員何かしら嫌な点を持っていて一人も好きになれない(笑)。ヒロインとも言うべき美禰子にしてもあまり美しくないと書いてある。しかも登場人物がやたら多い。横溝作品では複雑な人物相関関係が重要なキーになるので各作品で登場人物が少なくはないが、今作では椿子爵家という閉鎖空間にいる人物だけでも11人。これが後半になると複雑化して倍加するぐらいの勢いで登場する。あまりに複雑すぎて後半は誰が誰とどうなのかもう一度読み直さないとよくわからないぐらい。そしてこの人間関係がうわああああってぐらい倫理違反ですわ。最後に金田一さんが種明かしでじっくり解説してくれるのだが、今回は二段落ちともいうべき展開が待っている。最後で犯人がある行為をしながら死ぬのだが、あの落ちは素晴らしい。ほんとになぜなのかわからないのだがドロドロとした気持ち悪いという読後感が残らないのが不思議。

舞台が戦後すぐの神戸ということで空襲によって破壊しつくされた神戸の街の描写がリアルである。そのリアルさがまた実に当時と現場を体験している人だから書けるリアルさ。淡路島に渡るシーンで正規の渡船ではなく闇市へ行く漁船を使うなんてネタは、現場をしらなきゃ出てこないよ。そして、この時代の空気感がわかるのも俺みたいな昭和の空気を少しでも知っている人間までかもしれないな。