作者がエンターテイメントに徹したと言っているだけあって確かに面白かった。主人公達が50過ぎのいい歳こいた大人なので話自体は結構ドロドロしているがハッピーエンドなので読後感はあー面白かったというさわやか感がある。
物語の始まりは主人公がインフルエンザにかかって会社を休むというありふれた日常がちょっとだけイレギュラーするという、これから驚きの秘密が出てくるように感じられないところが作者の罠。そこから突然48億円なのでこちらも面食らう。まあ普通に考えても、そんだけの大金があると解ればなんだかんだと問題が起こって当然だが、ここで問題を爆発させず、過去の出来事や家族の問題など言わば伏線的出来事を重ねてじらすところが何とも上手い。さらに1億円を手にしながら「普通に暮らしても20年も経たずに無くなるな」と妙に主人公が冷静になるところも逆にリアルだ。この作品、かなりページ数は多いのだが登場人物のキャラが立ちすぎていて逆に描写不足に感じるほど。確かにこれは今時の半沢みたいなドラマ化には向いているよなー。