METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

家康(一、二、三、四巻)/安部龍太郎(10月31日読了)

 徳川家康といえばやはり山岡荘八の「徳川家康」全二六巻が有名かつ決定版として知られている。俺の親父の本棚にも新品のままの全二六巻が並んでいた。そんな名作も書き始められたのは1950年代。表現も古ければ昨今発見された歴史的な資料も反映されていない。しかも家康と言えば超大物な上に戦国時代のおいしい所、全てに絡んでいると言っても良い存在。その生涯をまともに描こうとすれば大作にならざるを得ず、名だたる作家は誰も手を出していない。その歴史小説の巨大な壁とも言える存在に安部龍太郎が果敢に挑戦した作品。

 一から四巻は桶狭間の戦いから本能寺の変直前までが描かれる。何と言っても流通とイエズス会という視点はこれまでになく新鮮に驚かされる。こういう自分の知識がアップデートされる瞬間はたまらなく知的快感だ。そういうおもしろさの一方で家康の人間味あふれる描き方もおもしろい。これほどもて男の家康がかつてあっただろうか(笑)。この四巻は戦国時代の一番面白いところなので登場人物は有名どころだけでも信長や織田家臣団、徳川家臣団だけでもすぐに十指にあまる。この中で誰にスポットライトを当てて家康と絡ませていくかが、作者の妙味なわけだが、安部龍太郎氏がスポットライトを当てたのはまず信長。饒舌に未来を語る信長にはベンチャー企業の社長が夢を語っているかのようだ。この会社は超ブラック確定なんですが(笑)。そしてもう二人が母 於大の方と叔父 水野信元。この3人が家康の人生の転機で決定的な影響を与えていく。決して順調ではないこの頃の家康が苦悩の中から生き方を見つけていく物語は実に面白い。
 現在連載中の山陽新聞では秀吉の天下になって北条攻めの手前なのだが、歴史的真相から作者の妄想(笑)が入り始めた様に感じられちょっと先行き不安になってきている。