ユーチューブで77年の映画版を観たので原作を読んでみた。
嫁は高校の図書員の時に権力濫用で横溝正史を全巻図書室に揃えたというツワモノで自宅本棚にも文庫が全巻揃っている。
俺は今まで推理小説はほとんど読んでこなくて横溝正史は全く読んだことがなかった。勝手に明治の文豪の様な「でせう」系の文章かと思っていたら、さにあらず非常に読みやすかった。それもそのはず横溝は戦後流行した作家だった。
横溝は若い頃結核を患い戦争に行くこともなく岡山に疎開していた。ここでの体験が活かされた作品が多い。この八つ墓村も実際にあった津山30人殺しという事件がネタとして使われている。また映画でも出てきた高梁市の広兼邸は山城みたいな、いかにも曰く有りげな家である。そんものに囲まれいろいろな話を聞いていたらそりゃこんな物語も生まれますわ(決して岡山をディスってませんよ(笑))
映画は取りようによっては怨霊による復讐譚ともとれるが、原作はあくまでミステリーである。金田一耕助は横溝作品に続けて出ていて、この作品はルパンやホームズなどのシリーズものと同じく金田一シリーズの一巻と言っていいだろう。敏腕探偵として登場するが、推理していく過程を描くというよりも起こった事件をストーリーテラーとして語っていく存在の様に思える。ミステリーなのであまりネタバレは書かないが、映画とはオチが違う後半の洞窟のシーンは、真っ暗な洞窟内で松明を使って展開される活劇というのはちょっとむりな様な気もするがスリリングである。途中から映画とは全く違う展開には意外さも俺にとってはスリリングさを増した。