サージェントペパーズを彷彿とさせる雑踏の効果音の後に聞こえてくる美しいピアノの調べ。
ぐっと期待は高まるが次に聞こえてくるのは衰えが隠せないポールの歌声。
伸びに欠けて少し苦しそうにさえ聞こえる。
アルバム後半ほど歌声はよくなってくるがそれでもシャウトはかなりきつくておじーちゃん無理せんでええと肩を叩きたくなる。
しかし聴き終わった時の印象は一言「素晴らしい」
エジプトというキーワードとアルバムジャケットからもっとキラキラした楽曲を想像したが、大半の曲はポールらしいメロディアスな落ち着いた曲調だ。
前作「NEW」は突出して出来が良い5曲程がサイケに通じる派手派手しい全体の印象を決めていたが、今作は旅をテーマとしたコンセプトアルバムなので、突出した曲が無い変わりに全体のまとまりは良い。
個々の曲を聴いていくとコード進行やリズム、アレンジに対するチャレンジというかお遊びは豊富だ。
最後半にメドレーやリプライズを持ってくるところはいかにもポールらしい。
よく曲が降りてくると言うミュージシャンは多いが、どうしてこんなにポールにだけ降りるのか神は不平等なのではないかと思う。
いや違うのだ降りてくる所にはそれなりの理由があるのだよ、と納得する。
御年76歳にして、まだ新しいことに果敢に挑戦し、それが変に無理したり若作りして無く自然体に近いところが凄い。
ポールの音楽に対する探究心がこの傑作を作り出したのは間違いない。