METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

オフリミッツ横浜外事警察/伊東潤(実業之日本社文庫)

 敗戦国日本に戦勝国アメリカは進駐軍として日本各地に駐留した。進駐軍の話は自分の親からも少し聞いていたが「ギブミーチューインガムと言えば笑って投げてくれた」というよくある話しか聞いたことがない。それは大部隊の進駐軍がいなかった地方の話で大部隊が進駐していたところでは我が物顔で日本を占領していた。中でも横浜・横須賀方面はその大部分が日本人が入れない米軍占領地だった。日本とアメリカにとってお互いの黒歴史そのものであるこの時代を舞台にした作品はほとんど読んだことがなかったが、進駐軍の存在がリアルに伝わってきた作品である。

 1963年(昭和38年)横浜で若い女性が被害者の殺人事件が起きる。これを追っていく警官は見かけはアメリカ人の日系二世ソニー沢田。戦前にアメリカ人船員との恋に落ちて捨てられた母を持つ。現代の我々からは想像もできないくらい差別された苦労の連続の人生を歩んできた。沢田は捜査していく中で日系三世のショーン坂口と出会う。坂口もまた沢田と同じく日系人として差別された過去を持っているが、その気持は非常に複雑。あくまでアメリカ人としてプライドを持ちつつも日本人の父や祖父の経験や言葉が、その生き方に大きな影響を及ぼしている。物語はこの二人の複雑な過去を絡ませつつ犯人を追い詰めていく。しかしもう少しのところでアメリカ軍の壁が立ちはだかり捜査は虚しく中止となる。米軍の闇に首を突っ込みすぎた坂口は当時戦闘が激化していたベトナムへ転属となる。しかも犯人も一緒に!ここからは読んでいただきましょう。一気読みの大どんでん返しでした。