フォッケウルフと言えばメッサーシュミットと並ぶナチスドイツ軍空軍の名戦闘機。ところが名だたるドイツ空軍エースが愛用した機体は圧倒的にメッサーシュミットが多い。性能的には各型が常に上回っていたにもかかわらずである。各国の戦闘機を見てもこういう現象はなかなか無い。そりゃそうである命をあずける機体は少しでも性能が良い方、任務に適している方を使いたいに決まっている。強いて言えば日本陸軍の二式戦闘機鍾馗が似ているだろうか。パイロットの好みが分かれたのは開発目的から明らかに違うからだったので実際違う使われ方をした。フォッケウルフの場合はドイツ人パイロットの性格的な傾向もかなりあるのだが、実は政治的な問題でメッサーシュミットの方が優遇されていたのだ。それにしてもこの本、ノンフィクションでありながら中々イマジネーション豊かである。普通この手の本は各型がどういう経緯で開発され戦闘エピソードを淡々と綴っている物が多いが、この本は随所にナチスドイツ空軍の有名どころの”会話”が登場する。これが良い感じのアクセントになって資料としてで無く読み物として面白い。ゲーリングとかなんか憎めないおっさんにしか思えない(笑)。しかしタイトルがフォッケウルフでありながら、特に後半はメッサーシュミットのエピソードもたっぷり。これはこれで面白かったのだが、ならばもう少しクルトタンク博士について書いて欲しかったな。