クルマに例えれば70年代のセリカリフトバックをすっ飛ばしている感じかな。同じスピードでもハイブリッドカーでは決して感じられない感覚、そんな感覚がこのアルバムには活きていると思う。ここ最近は他のベテランバンドも起死回生の傑作を生み出すことが多いけれど、大抵はメンバーを若手に入れ替えたり若いプロデューサーに音作りを任せていたりする。クルマに例えればパワステとかオートマ導入、いやいやハイブリッドにしやがったなみたいな感じなんだけど、AC/DCだけは相変わらずハイオク満タンでマニュアルシフト。ハンドルだけはようやくパワステ化したかな程度の感じなのだ。さすがに2000年代のアルバムには走りはする物のちょっとよたってきたかなという感じを受けたが、今回は車検を終えてバッチリ走っている感じだ。
ほとんどがミドルテンポの曲でやや疾走感が足りなくて傑出した曲が無いのは否めないが、アンガスの歩みと共に歌って体を揺らすには最強の楽曲が揃っている。ブライアンの金切り声がアルバムで聴く限りは衰え知らずな事がまず大きい。それとシンプル極まりないのだがこのバンドにはやっぱりこのドラムというフィルラッドのプレイ。全体的にあふれる爽快感はこの人のドラムのヒット一発一発の爽快感なんだな。世界的に良いことが少なかった2020年だがこのアルバムは一服の清涼剤に近い。世界的な売れ行きがそれを示している。早くライブで大合唱したいぜ!