METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

花酔い/村上由佳(文春文庫)9月26日読了

秋の発情期(笑)なのか急に官能小説が読みたくなって検索してみた。
この作品は俺にとって初の官能小説。
 いわゆるAVみたいな取って付けたようなストーリーに最初から最後まで激しいセックス描写みたいなものを予想していたが、予想外に味わい深い実にいい作品だった。
東京と京都を交互に行き来するストーリーは映像的な展開でセックス描写のために考えられた様な安易なものではない。非常に細かな取材に基づいた丹念な人物描写で、4人の主役それぞれ歪んだ性癖に必然性と説得力を持たせている。直接的なセックス描写は長くても数ページ程度。だがやってることは半端なく凄い。特に千桜・誠司組のSMプレイは超弩級変態プレイなのだが、ただの変態プレイとは感じられない。愛の行為とはほど遠いのだが(それは本人たちすらわかっている)ある種の悲しさを伴った宿命的なものを感じさせる。
京都と東京下町という深い歴史の情念を感じさせる街を背景として持つ主人公の女達。歩いている描写すら想像力を掻き立てずにはいられない。作品の中でも書かれているが二組の夫婦が了解スワッピング状態でなく、片方の女の方だけが他の二人にバレていないと思っている設定が良い。抑圧されて生きていた事が出会いによって、とんでもない自我をさらけ出していく千桜と誠司に対して、それまで奔放に生きてきたような麻子と正隆は秘め事に燃え上がる。この対比がええんですわ実に。
というわけで初官能小説は十分に面白かった。面白かったというのは股間への刺激も十分だったが同等に頭への刺激も十分だった。
官能小説ってある程度年齢をとってからじゃないと味わえないと読んでみてわかった。夜の多様性にも寛容になってくる年齢になってから読むと味わいが深い。どんなに丹念に必然と思わせる説得力がある書き方をしてもその性癖自体に寛容でなければただの変態としか感じることは出来まい。その人の人生、生き方が凝縮されたものが性行為であるとして、それが抑圧から完全に開放されたとき人はどうなるのか。人物描写こそ官能小説のキモではないだろうか。

ちなみに今どきフランス書院って置いてある書店少ないんだな。