大河ドラマの主役と言うことで読んでみた。
俺は熊本県出身だけど、この方を全然知らなかった。
両親に聞いたところ、母が知ってるどころか度々一緒に走った事があるという。
練習で金栗さんが走っているとみんな追っかけて走ったというフォレスト・ガンプみたいな話が書いてあるので、まさにこれだろう。
読めば大正期には超有名人だったのはよくわかる。
が逆に何故ここまで知られざる存在になってしまったのかもわかる気がする。
金栗さんの選手としての成績は散々だ。
日本人として初参加したストックホルムオリンピックでは消えた日本人として有名になったというほほえましいエピソードになっているものの成績としては途中棄権。
次のアントワープでは16位 次のパリでも30キロ付近で途中棄権している。
世界にかなわなかった日本人として次第に一般的には忘れられていったのだろう。俺が知らなかったのは当たり前で熊本だけは戦後でさえその人柄も相まってローカルヒーローでありつつづけていたのだ。
金栗さんはオリンピック引退後日本のスポーツ振興と選手育成に力を注でいる。言っておくが日本国内では素晴らしい成績を残している。
その実力や名声、影響力からすれば団体の設立とか、ある選手を一生懸命育てたみたいな事で名を上げることも可能だっただろう。
しかし金栗さんは日本全体がどうすればスポーツに目が向き自然と人が育っていくか、その環境作りを考えた。
金栗さんは日本人の体力不足と国としての力不足をオリンピックへの参加から身をもって教訓として得ていたのだ。
走る事を普及させるためにはまずは走る事を世間に広く知らしめて参加者を増やさなければいけない。
並の人ならば選手集めに奔走するところだろうが、金栗さんは駅伝を考えつく。
チームで競技すれば単純にマラソン選手が増やせるからだ。
その駅伝が有名になるのは箱根駅伝がきっかけだが、実はこれアメリカ横断の予選会のつもりだったというエピソードが凄い。
アメリカ横断でドーンと花火を打ち上げるつもりだったのだ!。
箱根駅伝がマラソン、駅伝に留まらずいかに日本のスポーツ振興に役だった事か。日本人は小学生の頃からよく走らされる。
何故走らされるのか考えてみたことも無かったが走る事こそがあらゆるスポーツの基礎なのだな。
金栗さんがこの様に大きな立場で考えるようになった背景には柔道の創始者 嘉納治五郎とオリンピックの創始者といわれるクーベルタン氏の考え方がある。
いずれも心と体の調和を目指した人達である。
感想文とは離れるが、昨今のオリンピックを始めとするスポーツ競技にはいろいろな問題がある。
今回の大河ドラマをきっかけに金栗四三さんが全国に知られることはスポーツの原点を見つめ直す良い機会になるのではないかと思う。