METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

太平洋戦争の真実/神立尚紀(講談社)

 太平洋戦争体験者25人の証言集。
 今から20年前は2003年だ。ついこの前の様な気がするし、俺の感覚では90年代でさえ最近だ。そう思うと俺たちの世代が小学校時代に聞かされた太平洋戦争の話は聞いている俺たちにとっては遠い昔だったが話している方からすればつい先日の事だったに違いない。だからといってその話が真実を伝えていたかと言えば、80年代まで書物にされた話の中には多くの脚色、偏向があることが今、わかっている。当時の社会情勢や語る人々の心情を考えれば仕方がないことだ。そりゃそうだろうまだ当事者が数多く生きているのである。真実など語ろう物ならどこからそれこそ鉄砲玉が飛んでくるかわからない。左翼系メディアに語ったが為にあらぬ方向にもっていかれて大変な目にあった方も多いらしい。それよりも思い出したくない、語りたくもないという人も多かったであろう。

 時は経ち昭和天皇が亡くなり平成となったあたりから、もう良い時期だろう秘匿よりも伝えようと考えるようになった人達も多くなり徐々に戦場や軍内部の状況、銃後の様子などの真実が語られ始める。だが平成も10年過ぎた辺りから今度は当事者達が亡くなるか年老いて記憶が曖昧になったり聞き取りが難しくなり始める。つまり当事者から本当の話が聞けたのは極限られた期間であり、しかも簡単に人に話せないような話もある。聞き手との信頼関係も重要になってくる。本書は著者の神立氏が信頼関係を築き上げたからこそ当事者達が語ってくれた真実である。本当に貴重な証言ばかりだ。あえてそれについてはここでは書かないので是非とも呼んで頂きたい。
 一つ思うことは上記の様に真実を聞き出すには当事者と厚い信頼関係を結ばなければならない事から本著での証言は縁があった海軍関係者ばかりになっている。一部には陸軍の軽い悪口も聞こえるので是非陸軍関係者からの真実も聞いてみたいが、もう無理なのだろうか。

23年8月15日読了