昭和63年に社会人となった俺にとって平成という時代はサラリーマン人生そのものだった。
平成は昭和天皇崩御による自粛から始まった。当時会社の上司は学生運動で機動隊にうんこを投げていた左翼系の方だった。「自粛なんかしないもんねー」と派手なネクタイで連日ゴルフ場と酒場を行き来していた。時代はバブル全盛期。今にして思えば昭和天皇が死をもって日本人に警告したかの如くまもなくバブルは崩壊した。俺がいた医薬品業界はそれほど極端な影響を受けなかったが、日本産業界にも日本という国自体にもまだ余裕があった。平成10年ぐらいまでは阪神大震災、オウム真理教テロ事件、神戸のサカキバラ事件など、かなり暗い出来事が多いのだがバブルの余韻もあったしも余裕で乗り越えた感がある。俺自身が行け行けドンドンの独身真っ盛りだったこともあって暗い印象は一切無い。
世の中大きく変わりだしたな思ったのはやはり民主党が政権を取ったあの頃。自分自身も少し前にパニック障害を煩って治療中だったので世の中が不況と閉塞感で暗くなってきた感じがした。そこに東日本大震災が来た。日々増えていく被害者数と共に暗澹たる気持ちになり原発問題が明らかになるに及んで会社を休んでしまったほどだった。それから数年後今度は自分の実家熊本で大地震が起こった。これには心底びっくりして初めて知った時には足が震えた。そしてその後50を過ぎた俺にも仕事上で人並みの苦労がやってきた。でもそれを何とか乗り越えられているのもあのような震災を経験している人達が頑張っているのを見て聞いて知っているからだ。手を抜かず頑張ろうと思うのは本当に苦労されている人々がいるからだ。
平成は災害続きだったと言われるが昭和まではこれに戦争が加わるわけでもっと大変だった。平穏な中にも油断出来ない災害があること、これが日本人の人格形成に影響を及ぼしていることは間違いないと思う。災害は平成の思い出にある種の影を入れている。この影があるからこそ平成の穏やかな明るさも際立っているのではないだろうか。