METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

なぜ日本陸海軍は共に戦えなかったのか/藤井非三四(光人社NF文庫)

 一般的に好戦的な陸軍に対して平和的な海軍という認識が広く日本人にはあるが、そんな認識を根底から覆すと共に当時の軍上層部に対して真剣に腹が立ち現代日本にもつながる日本人の本質さえ考えさせられる一冊。終戦記念日が近づくとこの手の話題も多くなるので是非一読をお勧めする。
 陸海軍確執の原因が明治維新にあることは仕方がないかもしれない。陸軍は長州閥、海軍は薩摩閥が基本だからだ。それを言いだすと遠因は関ヶ原(笑)だから根深い。日清・日ロ戦争では近代軍隊として試行錯誤の中、確執を乗り越え共同作戦を成功させる事も多かった。しかし大正時代になると予算の取り合いが始まる。私は海軍が少し多かっただろうなぐらいの認識だったがとんでもない!常に海軍は陸軍の2倍、これが太平洋戦争終戦まで続いた。当時、敵国はどこだったかといえば、まず中国、そしてソ連アメリカは優先順位が低くイギリスに至っては同盟国。どう考えても大陸に展開する陸軍予算を優先すべきだが海軍は予算を取るためになんだかんだと理由をつけて予算を多く取る。陸軍は予算不足から最新兵器である戦車開発どころか近代戦に不可欠な大砲・機関銃さえ揃えられず小銃弾さえ回収しながら使い回す。これが陸軍が妙な精神主義に走る遠因になる。昭和に入ると軍部は政治に深く絡んでくる。当時、陸軍・海軍は大臣を出せたから政治に対する発言力は絶大だった。ここに至って陸海軍の対立が国策を誤らせたと言っていい。太平洋戦争が始まってからは読み進める毎に腹が立つことばかり。その主因は主に海軍で海軍が和平派なんて嘘っぱち。陸軍はよく我慢したなという場面が数多く出てくる。どちらが悪かということでは無く本当によくこんな体制で戦争をやったなとしか思えない。

 これほど国から(この本に書いてあるのは陸軍と海軍の話だが国民からすれば国から)酷い目にあったのだから今に続く日本人の軍隊嫌いは非常に納得出来る。特に80歳以上の高齢者やその高齢者から直接非常に生々しい話を聞いて育った60歳代が強烈な反軍思想になるのは当然かもしれない。それでも戦後日本が共産化しなかったのは天皇陛下の存在と米軍の占領統治が上手かったからだが、あまりに忠誠心が強すぎる国民性にも一因がある。このあまりに強すぎる忠誠心は高度成長期の企業戦士、最近のブラック企業の問題などかなり現代にも通じている。またバブル以降多くの日本企業が消えていったことや最近のセブンペイなど上層部の判断が原因で駄目になったことも忠誠心ゆえに上に対して意見が通りにくい日本企業の宿命を感じてしまう。