METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

アルマジロの手/宇能鴻一郎(新潮文庫 電子図書)

内容とは関係ないが初めて電子図書で購入してタブレットで読んだ。紙と全く遜色なく読めた。

 

 元祖官能小説と言えばこの方なのだが初めて読んだ。巻末解説で初めて知ったが東大出て芥川賞を受賞し、そのまま文芸大家一直線コースを歩まず官能小説を書き始めたという元祖にして最強の経歴であった。この経歴だから初期官能小説作品は世間から物凄い批判を浴びて受け入れられず長い事お蔵入りになっていたらしい。それが3年ほど前、初期作品集が復刊されて再評価され、それに続くのが本巻である。

この作品集は鮟鱇、鰻、海亀など動物や植物をメタファーにした短編作品集。今で言うところのフェチな作品で、時代背景の昭和的暗さと相まって全く古さを感じさせない背徳感がある。人が何に官能を感じるかは、表面的にはAVを見ればわかるように現代のほうが凄まじいだろう。だが本能的に感じる官能は人間誰しも奥底に潜んでしかも、どこにそれを感じるかは人それぞれで他人には理解不能だったりする。逆にそれが理解できる人間同士は深淵を覗けたりもする。そんな人間の奥底を掘り出していくことに意義を見出した宇能鴻一郎はやはり凄い作家だった。いずれの作品でも食べる場面があるのだが、この食べるという行為の描写で官能を感じさせる・・・というかここに官能を感じないと何も面白くない。読み手の人生が試される作品群だと思う。