METAL RYCHE m-2316

METAL RYCHE鋼鉄帝国として20年ほど前から やっていたホームページから転進しました。 「鋼の旋律」は主に音楽関係について。 ジャンルは軽音楽なので気楽に読んでくれ。 「鋼鉄の言霊」は社会一般に対する我が闘争。 我が妄想に近いが、我が早漏よりもましであろう。まあ、これも気楽に読んでくれ。 「銀河のスクラップ」は本や映画の感想など人生のスパイスだな。たまに塩味がきついが気軽に読んでくれたまえ諸君。

邪心の覚醒(上下)/エリックジャ・コメティ(竹書房文庫)

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ナチスの聖杯」の続編。

前作もそうだったが下巻後半の息をもつかせぬ展開は最高だ。
謎の力をもつスワスティカを探すナチスと英国諜報部の争いという基本構図は変わっていないが、ここにヒトラーがなぜ力を持つようになったのかが同時に描かれる。そのため時代と場面が激しく入れ替わる。第二次大戦の時系列や国の関係などの背景がわかっていない人には結構わかりにくいかもしれないが、得意中の得意分野の俺にとってはまさに映画の如く場面展開していく。スワスティカからして十分に怪しげなネタであるが今回はこれにテンプル騎士団フリーメーソンというお馴染みのオカルト王道ネタが登場。さらにアレスター・クローリー御大まで登場し結構なご活躍をする。ナチス側も前作でも大活躍のヒムラーSS長官ゲッペルズなどの常連組に加えてお笑い担当のヘス、残忍さこの上ないハイドリヒも登場。対する英国もチャーチルと国王陛下という超大物が御登場。そしてイタリアからは元祖ファシスト ムッソリーニドゥーーーチェも出るに至ってさながら東宝怪獣総進撃のようである。


さて前作で手にすれば無限の力を手にするスワスティカはナチスが手にしたのはニセモノで本物は米国に渡っていくというところから物語は始まる。英国の二重スパイとしてナチス内部に侵入したトリスタンはアーネンエルベのエリカ様といい仲になりながら3個目のスワスティカを探している。上巻ではそれがあると思われたクレタ島での探索が始まるのだが、全くのガセネタで、読み終わって気づくのだがナチスを震え上がらせた、クレタ島の怪しい集団は何だったのだろう(笑)。ほとんど後に関連が無かったような・・・。

今回の上下巻ではヒトラーの背景が描かれるがそれが何故かがわかるのは下巻の後半。英国が必死に探していた3コ目のスワスティカはなんとヒトラー本人が身につけていた!これがためにヒトラーの過去が描かれたのだ。そしてトリスタンはこれに気づきナチスをもだますトリックを仕掛けてヒトラーに近づく。ここからがこの上下二巻の白眉である。絶妙にトリスタンとエリカの艶話も散りばめながら一気に突っ走る。結局スワスティカはどちらも手にすること無く海の藻屑になるのだが、ヒトラーの手元から去ったことによりまた英国に有利なことが起こる。日本が真珠湾を攻撃し米国が参戦したのだ!
残る4つめのスワスティカはどこにあるのか。英国の二重スパイである事がエリカにばれてしまったのにナチス側に残ったトリスタンの運命や如何に!次回「スワスティカの凶音」で完結するらしいがおそらく日本もソ連も登場するに違いなくますます楽しみだ。